• ホーム
  • ブログ
  • 「プロバイオティクスを科学するシリーズ」 第3回 腸内環境改善と食物繊維

ブログ

コラム

「プロバイオティクスを科学するシリーズ」 第3回 腸内環境改善と食物繊維

【加齢による腸内フローラの変化】

腸内フローラの多様性は、その構成は宿主や食事、生活習慣によって異なり、比較的安定的であることが分かっています。腸内フローラの構成は、5歳頃までに決まり大人になってもほとんど変わることはありません。ただし、食生活や生活環境で小さな変化は絶えず起きています。そして、老化により腸内細菌の種類が少しずつ減り、多様性が失われていきます。

具体的には、ビフィズス菌(善玉菌)が減少し、ウェルシュ菌(悪玉菌)やエントロバクター(悪玉菌)、ストレプトコッカス(悪玉菌)などが増加します。この腸内フローラの変化は、更に老化を促進すると言われています。

100歳以上生きる長寿の方の腸内細菌を研究したデータでは、ビフィズス菌やアッカーマンシア菌の増加により、悪玉菌の増加や腸内フローラの多様性の低下が相殺されているらしいことが分かっています。また、ビフィズス菌や酪酸菌などのプロバイオティクスとプレバイオティクス(食物繊維やオリゴ糖など、有用菌の“エサ”となるものを摂取)を組み合わせると、高齢者のナチュラルキラー(NK)細胞の活性が高まり、自然免疫が強化されることが分かっています。

これらの研究からも、健康で長生きをするためには、プロバイオティクスを呼ばれる菌をある程度の量を日常的に継続して摂取することが望ましいです。そして、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたシンバイオティクスだとより効果があります。

 

【特定保健用食品と効果】

最近は、「特定保健用食品」の国の許可を取得した商品が、多く販売されています。特定保健用食品とは、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。販売には製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、国が許可を与えます。更には、「おなかの調子を整える」、「免疫の維持をサポートする」、「食後の尿酸値上昇を抑えるのに役立つ」などの特定の保健の用途に資する旨を表示することが可能です。

プロバイオティクス医薬品は整腸効果がほとんどですが、プロバイオティクス食品は、免疫、血圧、中性脂肪、アレルギー、尿酸、内臓脂肪、睡眠、皮膚機能改善、骨密度、ピロリ菌など様々な効果が期待できるとしています。

 

【腸内環境改善策の鍵(食物繊維)】

先程、腸内フローラの構成は、ほとんど変わることはありませんが、食生活や生活環境で小さな変化は絶えず起きていますと言いました。小さな変化とは、一つひとつの細菌をよく見ると、勢力争いは毎日起こり、勢力交代が日々生じています。このような変化は、前日に食べた食物繊維の量で、約15%の細菌種(善玉菌)の勢力に影響することが明らかになっています。また、食物繊維によりビフィズス菌の占有率が高くなることが明らかになっています。良い腸内フローラの創造には、食物繊維が不可欠です。

厚生労働省による最近の報告によれば、日本人の食物繊維平均摂取量は1日あたり14g前後と推定されています。 厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあるので、積極的に摂った方がよさそうです。

食物繊維を摂取するのに、どのような食材が良いのかを調べてみました。いろいろな食材をバランスよく摂るのが良いですが、それでも1つ選ぶとするなら、食物繊維優秀食材1位は、「こんにゃく」です。特に生芋こんにゃくは、腸内フローラの構造と腸組織の修復を調節するだけでなく、カルシウムにセラミドを含んでおり、骨や皮膚に良い影響があります。そしてカロリーを抑えることもでき、ダイエットにも良い食材です。是非、定期的に摂っていただきたい食材です。

 

 

 

【参考資料】

医科プロバイオティクス学、臨床プロバイオティクス学、すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢

 

Journal  Aging medicine (Milton (N.S.W)). 2024 Jun;7(3);406-413. doi: 10.1002/agm2.12336.

Author   Ivan David Lozada-Martinez, Luz Miryam Lozada-Martinez, Juan-Manuel Anaya

Journal  Advances in nutrition (Bethesda, Md.). 2024 Jun 17;15(8);100263. doi: 10.1016/j.advnut.2024.100263.

Author   Yunan Hu, Mashael R Aljumaah, Maria Andrea Azcarate-Peril

Journal  Nutrients. 2023 Apr 16;15(8); pii: 1924.

Author   Jacqueline Rehner, Georges P Schmartz, Tabea Kramer, Verena Keller, Andreas Keller, Sören L Becker

Journal  Nutrients. 2024 Jun 29;16(13); pii: 2082.

Author   Aakash Mantri, Linda Klümpen, Waldemar Seel, Peter Krawitz, Peter Stehle, Bernd Weber, Leonie Koban, Hilke Plassmann, Marie-Christine Simon

Journal  ACS omega. 2024 Jul 09;9(27);29609-29619. doi: 10.1021/acsomega.4c02768.

Author   Liling Deng, Geng Zhong, Dongxia Zhang, Zhaojing Zhu, Yongbo Peng

Journal  Food chemistry: X. 2024 Jun 30;22;101295. pii: 101295.

Author   Liling Deng, Geng Zhong, Qiong Wang, Zhaojing Zhu, Yongbo Peng